インタビュー

Web予約件数が前年比約150%に増加 「オートバックス」の公式アプリ・Web版のピット予約システムの
リニューアル事例

株式会社オートバックスデジタルイニシアチブ:OMOビジネス推進部 山崎 達哉様、リテールデジタル推進部 安原 利哲様、株式会社CORIN:中村(代表)、高坂(エンジニア) 写真右から株式会社オートバックスデジタルイニシアチブ:OMOビジネス推進部 山崎 達哉様、リテールデジタル推進部 安原 利哲様、株式会社CORIN:中村(代表)、高坂(エンジニア)

1947年の創業以降、豊かで健全な車社会の創造をミッションに掲げ、お客さまに最適なカーライフを提案し続けるカー用品業界最大手のオートバックスセブン。国内で約600店舗を展開する同社のデジタル活用を率先しているのが、子会社の株式会社オートバックスデジタルイニシアチブです。

この度、オートバックスセブンが提供するピット予約サービスのアプリとWebシステムのリニューアルを、弊社が担当いたしました。お取り組みの背景にあった課題や比較検討で重視されたポイント、そしてリニューアルによって得られた成果について、ご担当者さまにお伺いしました。

お取り組みの背景

業界でいち早くピット予約のデジタル化を進めたものの、
システムのリニューアルに課題

リテールデジタル推進部_安原 利哲様 リテールデジタル推進部 安原 利哲様
オートバックスデジタルイニシアチブ社の事業内容をお聞かせください。
安原 利哲様(以下、敬称略):弊社は、オートバックスセブン本社のデジタル部門が独立した100%子会社で、主に国内外のオートバックス店舗で使われているシステム構築から運用保守までを担っています。社名に「イニシアチブ」の単語が使われている通り、オートバックスセブンのデジタル活用を率先して引っ張っていくこと、そして自動車産業のDXを推進していくことが私たちのミッションです。
弊社でリニューアルを担当させていただく以前のアプリは、いつ頃から提供されていたのでしょうか。
安原:カー用品店業界のなかでもアプリの提供はかなり早く、2012年にはリリースしました。ただ、デザイン面や機能面などで、さまざまな課題を抱えたまま7年間運用していたのです。
具体的にどのような課題を抱えていたのでしょうか。
安原:7年間でおよそ100万ダウンロードまでは達したのですが、肝心のユーザー評価があまり高くなかったのです。アプリのメイン機能である予約画面がWebビューで構築されていたためアプリの動作が遅く、運営側の課題としては、アプリ内クーポンやスタンプといったアプリネイティブ機能での販促施策を始めたくても開発できなかったこと、最新のUIデザインに変更したくても開発の手間がかかりすぎることが挙げられます。こうした課題を受けて、アプリのリニューアルを検討し始めました。

パートナー企業の比較検討

予算、開発方法、過去の実績、必要としていた機能を
開発できるかが検討項目に

OMOビジネス推進部_山崎 達哉様 OMOビジネス推進部 山崎 達哉様
パートナー企業を選定する上でどのような要素を重視していましたか。
安原:予算内に収められることや、既存パッケージを活用し柔軟にカスタマイズしながら私たちが必要としていた機能を開発できるかどうかが比較検討のポイントでした。アプリをMAツールや基幹システムと連携し、既存資産を活かしながら機能拡張できることや、フレキシブルにアプリ独自機能を開発しスピーディーに対応できるパッケージの基盤と開発力が備わっている必要がありました。

検討項目すべてを満たし、技術力とデザイン力の高さが
CORIN社選定の決め手に

パートナー企業として、弊社を選定いただいた決め手をお聞かせください。
安原:予算や開発方法、過去の実績、開発したい機能といった検討項目すべてを満たしていたことに加え、UI/UXを向上させるアプリ開発が可能であること、つまり技術力とデザイン力の高さが決め手になりました。

アプリの操作性はもちろん、販促施策として開発したかった来店時のスタンプ機能や、位置情報をもとにしたプッシュ通知、店舗毎に自店舗のお客さまに直接配信するプッシュ通知機能など、過去の開発実績をもとに弊社向けにデザインを起こし、わかりやすく提案いただきました。実際のコンペでは、さまざまな角度から質問をしましたが、的確にご回答いただけたことで安心感もありました。

比較検討時に掲げていた要件もすべて満たしており、大手開発会社を含む複数社と比較した結果、アプリのリニューアルをCORIN社にお願いすることになりました。

アプリリニューアルで得られた成果

オイル交換のWeb予約件数が、前年比で約150%に増加!

アプリのリニューアルで、どのような成果が得られましたか。
安原:お客さまに来店していただくピット作業予約のなかでも、特に件数のボリュームが大きいオイル交換のWeb予約数が、前年比で約150%に増加したことが最もインパクトが大きい定量的な成果です。この成果は、オートバックスセブン社の2022年3月期の決算資料にも書かれており、株主様にもご説明しています。

また、アプリのダウンロード数も増加しました。以前は7年間で100万ダウンロード突破したことに喜んでいたのですが、リリースから3年間で500万ダウンロードを突破し、本当に驚いています。アプリダウンロード数の急増には、さまざまな販促施策の成果がある面もありますが、やはり多くのアプリユーザーから高評価を得られたことが影響していると思います。アプリリニューアル前の評価では、Google Play(Android)で3.3、App Store(iOS)で2.1でした。リニューアル後はGoogle Playで4.1、App Storeで4.2と、両ストアとも5段階評価で4以上を獲得できているのです。

これらの成果に対しては社内から評価の声が多くあがり、マーケティングの観点からも、それまで手つかずだったWeb版のピット予約システムのリニューアルも検討することになりました。

WEB版のピット予約サービスリニューアルの相談の
きっかけと課題

リリース以降大きな改修をしておらず、Webからの予約件数に課題

Web版のピット予約システムには、どのような課題やお悩みがあったのでしょうか。
安原:そもそもWebの予約システムは、私たちが2012年に開発してからデザインや機能面で大きな改修を加えることなく稼働し続けており、その状況自体に課題を感じていました。ページ全体のUIを変更したくても、機能ごとに個別で開発されてしまった経緯もあってか、一括で変更を反映できなかったのです。その他にも、ピット予約をするために、店舗と作業をプルダウンリストから選択いただく必要があり、お客さまが選びたいメニューがその店舗で予約できるかが分かりづらいといった問題がありました。

その結果、ピット予約ページでは離脱率や直帰率などの課題が発生していました。リニューアル後のアプリの予約件数が増加している今こそ、Web上の予約システムも刷新し、快適な予約体験をお客さまに提供せねばと感じていました。
Web版のピット予約システムのリニューアルについては、どのようにパートナー企業を比較検討されたのでしょうか。
安原:今回もCORIN社を含む、複数社で概算見積もりをとり、比較検討を実施しました。予算に収まるかといった点や、デザイン力や提案力、そして我々のサービスをよく理解されているといった面から、アプリ版の予約システムを担当いただいたCORIN社にWeb版のピット予約機能もお任せすることとなりました。

要件定義と開発の流れ

Web版のピット予約システムの構築には、
新しい会員制度を反映する必要があった

Web版のピット予約システムは、どのようなスケジュールでリニューアルが進められましたか。
安原:2022年5〜8月の4ヶ月をかけて要件定義を行い、翌年3月までの7ヶ月間で開発、4〜6月までテストを実施しました。当初の想定通りのオンスケジュールで進行しまして、2023年9月26日のオートバックス会員制度のリニューアルと同時にリリースさせていただきました。
要件定義や開発フェーズで、どのようなポイントにこだわりましたか。
安原:デザインを刷新するだけの単純なリニューアルではなく、新しい会員制度のサービス設計をしながら要件に組み込んで構築しなければならなかったことが難しいポイントでした。新しい会員制度にはピット作業の回数やご利用金額などによってランクアップする3種類の会員ランクがあり、それぞれのランクごとに当日予約の受付開始時間が異なるのですが、お客さまにわかりやすいように表示や操作性をデザイン、機能設計しました。また、お客さまにピット予約のサービス名をわかりやすく伝えるため、メニュー名を変更したり表示方法を工夫し、お客さま目線で、わかりやすさや操作のしやすさを第一優先に、CORIN社と一緒に思考し構築しました。
中村(弊社代表) 中村(弊社代表)

中村:Web版のピット予約システムの開発チームは、アプリとは別チームを設けましたが、2020年のアプリリニューアル案件で初期にシステム構築を担当したメンバーを一部アサインするなど、Web版の開発がよりスムーズになるよう配慮させていただきました。また、アプリとWeb版で要件や実装がかけ離れないように、社内でも密に情報共有をすること、そして、開発者目線だけではなく、オートバックスセブン社のクライアントファーストな目線も取り入れて提案や開発をするように伝えていました。

高坂(弊社エンジニア) 高坂(弊社エンジニア)

高坂:私は、今回のプロジェクトからオートバックスさんとの開発に携わらせていただきました。外部ツールやオートバックスセブン社のシステムとの連携部分の開発が担当した範囲です。今回のような多数のシステムとの結合は珍しかったのですが、問題なく進行させていただきました。

お取り組みの成果と評価

粘り強く向き合う姿勢、そして課題解決力と
顧客に対する理解の深さを評価

Web版のピット予約システムのリニューアルによって、どのような成果を期待していますか。
安原:今回の取り組みでは、離脱率や直帰率の改善や新規顧客獲得数の向上を指標にしています。正確な数字が結果として表れてくるのは、リリースから数ヶ月経ってからだと思いますが、アプリリニューアルと同じく、今回も大きな成果が出ることを、とても期待しています。
アプリのリニューアルに続き、今回のWeb版のお取り組みでは、どのようなポイントを評価いただいていますか。
安原:印象的だったのは、CORIN社の粘り強さです。要件定義のフェーズでは、当初さまざまなレイアウトやボタンの色を試して、いわゆるABテストができる管理画面を開発したいと考えていました。しかし、そのためには管理画面をかなり作り込まねばならなかったのです。

こうした私たちの要望に対して、いきなり「難しいです」と門前払いするのではなく、私たちの要望を実現した場合、どの程度まで管理画面を作り込まねばならないのか、納期優先で進行した場合はどこまで開発できるかといった、私たちが判断するために必要な情報を粘り強く揃えていただけました。

そして、開発でも粘り強く最後までご対応いただき、納品いただいたWeb版のピット予約システムも、デザイン面や操作性含めて、私たちの期待値を超えるクオリティでした。
山崎:私が評価しているのは、開発時の課題解決力と弊社のサービスに対する理解の深さです。開発フェーズでは、プロジェクト管理ツール上で開発時に発生した課題を互いに共有していたのですが、細かな仕様やサービス面を含めて、詳細にヒアリングいただきながら様々な提案をいただき、弊社のサービスをよく理解いただいていると感じました。また、開発時にトラブルが発生しても、期日通りに誠実に対応いただきました。

お取り組みの総括と、今後の展望

一気通貫したシステム・アプリ開発、デザイン力の高さが
CORIN社の強み

オートバックスグループ全体として、DXに対する今後の展望をお聞かせください。
安原:「クルマを快適に使いたい」「クルマで出かけて楽しみたい」「好きなクルマでもっと自分らしく」というクルマの価値をお客さまに今後も提供していくため、さらにDXを進めていきたいと考えています。

また、お客さまのクルマをメンテナンスする際に必要な作業伝票など、現場の店舗にはまだまだアナログな業務が残っています。これらもデジタル化していくことで業務のさらなる効率化を目指していきたいですね。
今回のお取り組みで弊社はどのような存在でしたか。
安原:弊社では「AUTOBACS GUYS(オートバックスガイズ)」と呼ばれる、全国の店舗で働く整備士の中から選出したロールモデルの整備士を毎年コンテストで選出しています。その選出基準には、「プロフェッショナルであること」「フレンドリーであること」「情熱的であること」の3つを定めているのですが、CORIN社の方々はこの3つを満たす、まさに「AUTOBACS GUYS」のような存在だったと思います。
弊社のシステム開発は、どのような企業に、どのような点でおすすめできるでしょうか。
安原:企画の要件定義といった上流から、開発・運用・保守まで一気通貫でお願いできること、ユーザー目線で使いやすいデザインをご提案いただけることは、CORIN社の強みです。特にtoC向け(消費者向け)で販促機能を必要とするスマートフォンアプリやWebアプリケーションを導入したい企業には、おすすめしたいですね。